前に住んでた家を引っ越すとき畳に傷なんか付けていないのに、
大家さんから畳の原状回復を請求されたのですが…
2020年に国土交通省が発行したガイドラインでは畳の原状回復は、
借主は負担しなくてもいいというのが基本です。
そうなんですか!?
知らなかったから、そんなもんだと思って払っちゃいましたよ。
もくじ
国土交通省の「再改訂版 原状回復をめぐるトラブルに関わるガイドライン」では入居者が退去する時の
畳の表替えや修復について次のように書かれています。
賃貸物件の畳の原状回復は、基本的に貸主が行うのがルールです。
なぜなら、建物は誰が住んでいても、古くなるにつれて自然に傷んでくるものだからです。
それを入居した人が担うというのはおかしな話です。
そもそも、原状回復とは入居前の状態を指すものではなく、通常の住み方をしていて風合いが変わり、
それ相応に味が出た状態を指します。
また、震災などのどうすることもできないような損耗や、借主と関係のない第三者がもたらした損耗も、
当然借主が負担すべきでないと言っています。
つまり、常識の範囲で暮らしていれば、特に畳を変えたりせずにそのまま退去していいということです。
経年劣化や自然損耗の分の修繕費は、最初から毎月の賃料に含まれているので、改めて支払う必要は
ありません。
もちろん、借主に過失・故意があれば弁償しなければなりません。たとえばタバコの灰を落として
焼け焦げを作ってしまった、コーヒーをこぼしたままにして時間が経ちシミが消えなくなった、などが
これに当たります。
畳の経年劣化や自然損耗は原状回復の対象になりません。
では「経年劣化」「自然損耗」とは何のことをいうのでしょうか。
具体例をみてみましょう。
最後の「雨漏りや雨が吹き込んで畳が濡れて変色してしまった」に関しては、貸主から事前に注意を
受けている場合に限ります。
例えば、最初に借りる時に、『この部屋は、ガラス戸を開けっ放しにすると、雨が吹き込んで畳が
濡れるので注意してくださいね』と言われていたのに、ガラス戸を開けたままにしたらゲリラ豪雨で
畳を濡らしてしまった。
この場合は、借主が管理を怠ったとして負担義務が発生する可能性があります。
反対に、事前に何も言われていない場合は負担する必要はありません。
経年劣化・自然消耗ではなく借主に故意・過失がある―つまり「故意・過失や善管注意義務違反」は、
借主が原状回復を負担しなければなりません。
具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。
意図的に、または注意不足で畳にダメージを与えてしまったら故意・過失になります。
以下のようなものは故意・過失に該当し、借主に原状回復の負担義務が生じます。
畳を汚しても、すぐに拭くなどの対処をすれば元通りになることが多いです。
ただし、汚れたまま放置して状態を悪化させてしまった場合は管理を怠ったとみなされ、善管注意
義務違反の対象になってしまいます。
具体例には次のようなものがあります。
特約とは、一般的な契約内容とは別に、特別に儲けられている約束事です。
契約書に「特約」として明記されていれば、その内容は有効になります。
例えば、ペット可の賃貸物件や小さな子どもがいるファミリー物件の場合、特約として退去時の
畳の表替えが明記されていれば、それに従わなければなりません。
ただ、特約は基本的に借主が不利益になる場合には無効になることが多いです。
先にご紹介した国土交通省のガイドラインでは「客観的に見て特約を設ける必要性があり、貸主の
過剰な利益目的でないこと、借主が通常の原状回復義務を超えた修繕をおこなうことを承知している
などの条件を満たしていなければ効力を争われる」としています。
長く住んでいる借家などは、畳の原状回復を請求されることもあります。
ただ、畳は年数が経つほど自然に変色したりささくれができたりします。
そのため、畳には減価償却という考え方が用いられます。
減価償却とは、年々劣化していくような家や車などの固定資産を買って何年かに分けて支払うとき、
購入した時よりも価値が下がることを想定して金額を設定することです。
簡単に言えば耐用年数に応じて価値が下がっていくので、購入当時よりも安くなるということです。
改訂されたガイドラインでは耐用年数に応じた価値が6年や8年で1円になるという基準を設けました。
これにより、借主の負担割合は、入居年数が多くなるにつれて負担額が軽くなるという考えを
打ち出しています。
参考:国土交通省「再改訂版 原状回復をめぐるトラブルに関わるガイドライン」
貸主が手配してくれるとはいえ、畳の原状回復の費用相場を知らなければ、高い請求が来て納得が
いかなくても泣き寝入りということになりかねません。
実際に畳を原状回復する場合は、どのくらいの費用がかかるか知っておきたいところです。
畳の原状回復の費用相場を把握しておくと、請求された費用が妥当かどうかを判断できます。
下の表は、畳の「表替え」の一般的な相場です。
畳の表替えとは、表面のゴザ部分を新品と交換することです。
賃貸物件は入退去が頻繁なため、一般的には安価品を使用しています。
普及品を使っていたとしても、1枚負担するだけなら4500円。
過去には畳は6帖しかないのに、畳の原状回復に15万円請求された例などがあります。
このように、費用相場とかけ離れた高額を請求された場合には、見積りを見せてもらうなどして交渉する
ことができます。
畳が新品の状態で入居して、3年以内に引っ越すことになった場合は表替えではなく「裏返し」という
作業だけで済みます。
畳の構造は、厚みのある木の土台にゴザが縫いつけてあるというものです。
新品から3年以内の畳なら、表面のゴザを裏返して貼り直すだけで、見違えるようにきれいになります。
通常、入居してから4年以上たった畳は表替えをします。
今回は賃貸物件を退居するときの畳の原状回復についてみてきました。
これまで不鮮明だった畳の負担部分は、2020年に改訂されたガイドラインで、通常の住まい方をしていて
起こった畳の原状回復は基本的に貸主が行うものと定義されました。
改訂ガイドラインによる畳の原状回復
借主に原状回復義務が生じるケースは
でした。 畳の原状回復の費用相場は、1枚4,000円、高くても5,000円以内です。
この記事が、納得のいかない請求をされたときにお役に立てば幸いです。