新型コロナウイルスにおける消毒除菌剤の最新(2020/7/18日現在)の論文をご紹介いたします。
加速化過酸化水素による新型コロナウイルスの除菌・洗浄
Removing COVID-19 by Accelerated hydrogen peroxide
長野 俊一(国会議員秘書)
惟村 徹(特掃隊)
黒川 直(東京大学)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的蔓延は、いまなお多くの人命を奪っている。更には感染抑止のための隔離政策により、経済活動が阻害され、深刻な景気の悪化を招くという悪循環に陥っている。ワクチンが実用化されれば、コントロールが可能になるが、それでも感染は続くとの見方が強い。この様な現状に鑑みると、今後は経済活動を継続しながら感染リスクを低減する方法を模索しなければならない。
感染リスク低減の有効的な方法の一つが施設の消毒であると考えられる。(薬事法の承認を得ているものを消毒剤、得られていないものを除菌剤と呼ぶ)令和2年2月に横浜港に停泊したダイヤモンド・プリンセス号では、3,711人の乗員・乗客の内、712人の罹患者が確認された。この船の床面積は、約20万㎡であり、大規模施設に分類される。帰港の際には、除菌・清掃が行われ、その際に使用されたのは「加速化過酸化水素」であった。同年4月に長崎造船所香焼工場で停泊中に乗員の罹患が確認されたコスタ・アトランチカ号の除菌・清掃に使用された成分も同様であった。
したがって、施設におけるコロナウイルス除去の実績がある「加速化過酸化水素」の有効性の評価を行い、クルーズ船での除菌作業に選定された理由を分析することが、今後の新型コロナウイルス感染対応及び経済活動継続の一助になると考えている。
加速化過酸化水素とは、過酸化水素と溶剤、界面活性剤をバランスよく配合したもの。配合された活性化成分が、過酸化水素の細菌・ウイルスの内部への浸透を促進し、脂質、タンパク質、核酸を酸化させることで、過酸化水素を単独で使用するよりも、反応が早く、優れた除菌性能と高い洗浄効果を導く。
日本では、一般消費者にはあまり馴染みのない成分であるが、日本手術医学会のガイドライン(2013年改訂版)では、0.5%加速化過酸化水素が、手術室の環境整備に推奨されている。
一方、海外では、米国・カナダ・欧州で除菌のために広く使用されている。米国疾病予防管理センター(CDC)は「医療施設における消毒と滅菌のためのCDCガイドライン2008」において、0.5%加速化過酸化水素が1分間で殺菌活性および殺ウイルス活性を、5分間で殺抗酸菌活性および殺真菌活性を示すことを認めている。また、米国環境保護庁(EPA)は、加速化過酸化水素消毒剤をSARS-CoV-2の消毒に使用することを推奨している。また、2003年にSARS-CoVがカナダで流行した際に、加速化過酸化水素の有効性が証明され、カナダのオンタリオ州保健省が加速化過酸化水素の使用を推奨。全ての欧州医薬品庁(EMA)加盟国と救急隊員にその使用が義務付けられた。
最近まで、国内ではVirox社製及びDiversey社製の輸入品しか流通していなかった。更に、新型コロナウイルスの世界的感染拡大により米国等の買い占めが行われ、どちらも輸入が途絶えた。その様な状況を改善すべく、令和2年5月に国内メーカーのシーバイエス社が加速化過酸化水素「オキシライトPRO」を開発。今回はその国産品を基に検証する。除ウイルス試験結果は表-1の通りである。
ネコカリシウイルスはノロウイルスの代替として使用。これらは、エンベロープと呼ばれるウイルス粒子の膜が無いため、インフルエンザウイルスやコロナウイルスより不活化しづらい。
表-1
ウイルスの種類 | エンベロープ | 接触時間 | 除菌率 |
---|---|---|---|
ネコカリシウイルス*1 | 無 | 30秒 | >99.9% |
A型インフルエンザウイルス*2 | 有 | 30秒 | >99.9% |
マウスコロナウイルス*3 | 有 | 30秒 | >99.9% |
*1:試験機関 新潟薬科大学応用生命科学部
*2:試験機関 一般財団法人日本食品分析センター
*3:試験機関 厚生労働省国立感染研究所動物管理室
加速化過酸化水素を次亜塩素酸ナトリウム、アルコール、次亜塩素酸水と比較し、現場作業において重要視すべき項目ごとに整理したのが表-2である。
表-2
成分名 | 洗浄性 | 腐食性 | 変色性 | 臭気 | 安定性 | 火気 |
---|---|---|---|---|---|---|
加速化過酸化水素 | 〇 | △ | △ | △ | 〇 | 〇 |
次亜塩素酸ナトリウム | × | × | × | × | × | 〇 |
アルコール | × | △ | △ | △ | 〇 | × |
次亜塩素酸水 | × | △ | △ | △ | × | 〇 |
各項目における評価を、大まかに〇×で分類した。○は良好、△は著しい被害はないが注意が必要、×は使用に不適であることを意味する。洗浄性の有無は、汚れを洗い落とせるかどうかに関係する。腐食性の例は、金属のサビなどが挙げられる。また、変色性の例は、繊維製品の変色などが挙げられる。安定性は備蓄に影響する。因みに、シーバイエス社製の加速化過酸化水素の場合、開栓後でも2年間性能が落ちないため、備蓄も可能である。引火性が高い場合は、使用環境及び備蓄量が限定される。
これらの結果を踏まえると、ダイヤモンド・プリンセス号及びコスタ・アトランチカ号で加速化過酸化水素が選定された理由は以下であると考えられる。
厚生労働省が推奨している次亜塩素酸ナトリウムとアルコールは、施設の消毒には適さないことが表-2の洗浄性の有無の結果からわかる。どちらの成分も、洗浄性が無いため、汚れがある箇所での効果が得られない。通常、除菌箇所には、ホコリやたんぱく質などの汚れが付着しているため、次亜塩素酸ナトリウムやアルコールで作業を行う場合、事前に汚れを徹底的に取り除かなければならない。更には、その後に水拭きが必要となる場合もある。その工程が、煩雑なために作業を端折っている現場も散見され、結果的に除菌効果が得られず、感染者を増やしていく一因となっていると考える。
また、腐食性・変色性及び引火性の被害は、現場での使用においては深刻な課題である。帰国者受入れの隔離施設として使用したビジネスホテルでは、次亜塩素酸ナトリウムで除菌したところ、備品の変色・腐食が激しく、最終的に備品を処分した例も報告されている。また、高濃度のアルコールで消毒を行ったホテルでは、引火の危険性を考慮し、施設のブレーカーを全て落とした事例もある。エアコンが使用できない状況で防護服を着用した作業は、2月末の真冬のにもかかわらず、作業員が熱中症になるほどの環境となり、2時間程しか連続して作業行うことができなかった。今後、経済活動を継続しながら、円滑に除菌作業を行う上で、これらの被害が少ないという点は、加速化過酸化水素の大きな利点であると考えられる。
厚生労働省国立感染症研究所によるダイヤモンド・プリンセス号船内のRT-PCR検査の結果から、患者周囲のトイレ周辺、机、電話機、TVリモコン等から多くのコロナウイルス(SARS-CoV-2 RNA)が検出され、接触伝播の可能性が高いことがわかっている。したがって、この様な部分を重点的に加速化過酸化水素で除菌・洗浄することで、感染リスクを大きく下げることができると考えられる。
ところで、なぜ省庁が、ウイルス除去に最適な加速化過酸化水素を推奨しなかったのだろうか。最大の理由は、流通量にあったと考えられる。シーバイエス社が製造する以前は、国内には輸入品しかなかった。また、厚生労働省の場合、薬事認可の無い成分に関して見解を出さないという傾向が強い。(薬事認可が無くても販売・使用は可)。経済産業省・独立行政法人製品評価技術機構(NITE)で設置された代替消毒液委員会では、当該成分も議論の対象となっていたとの情報がある。しかしながら、国産の加速化過酸化水素を製造できるのは、現状、シーバイエス社の1社のみであるため、経済産業省は、推奨を敬遠したのであろう。
加速化過酸化水素は、新型コロナウイルスの除菌・洗浄に非常に有効であり、他の成分より圧倒的に優れていることがわかる。今後、加速化過酸化水素の性能及びクルーズ船での使用実績が、広く認知され普及されることを期待する。
(https://www.cdc.gov/infectioncontrol/pdf/guidelines/disinfection-guidelines-H.pdf)
(https://www.epa.gov/pesticide-registration/list-n-disinfectants-use-against-sars-cov-2-covid-19)
以上のように、新型コロナウイルス除菌において加速化過酸化水素は世界ではスタンダードであります。
しかし日本では手に入りずらい商品の為今まで日の目を見る事がありませんでしたが、いよいよ国産化され日本に流通し始めたのです。
これでコロナ除菌が進めば…祈るばかりであります。
新型コロナ消毒の最高峰に位地する加速化過酸化水素の国産化に当たり、特掃隊では除染作業の最前線の意見を組み込んでもらい加速化過酸化水素のコラボ商品をご用意いただきました。
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