特殊清掃のニーズ
テレビや新聞等で孤独死の言葉を耳にしない日はありません。
それだけ身近な事になってきています。
亡くなられた後の片付けは、本来ならご遺族が行う事ですが、色々な事情により出来ないことが殆どです。
「特殊清掃」の言葉が今ほどの認知度がない頃から、孤独死があった部屋の清掃、消毒、片付けを行っていた業者はありました。
遺品整理が注目され初めた2010年頃から、特殊清掃の仕事も注目され始め企業や団体が特殊清掃に関する民間資格を出し始めたのもこの頃からです。
ここ2~3年は新型コロナウイルス除菌活動なども特殊清掃業に依頼されるケースが多い事から、特殊清掃業を目指す方はさらに増加しました。
その為、特殊清掃業人を目指す人の中でも、特殊清掃業の実態や、知らなければいけいことを知らない人が増加しました。
今回はそのような特殊清掃人を目指す方!特殊清掃業を開業したい方!に向けた記事となります。
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もくじ
特殊清掃業を良く考えず、調べないで開業すると、知らないうちに犯罪行為に加担していたり、
罰金や懲役刑などになる可能性もあります。
これは非常に重大な事であり、知らなかった!では済まされません。
更に人体被害や、労災などのケガなどの自分の人体へ取り返しのつかない事もあります。
特殊清掃業にかかわるリスクは大きく分けて2つ
【人体被害】と【犯罪ほう助】
です。では詳しく説明をしていきたいと思います。
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筆者は特殊清掃業を約11年ほど営んでおります。特殊清掃業を創成期から携わる事で、様々な問題点を目にしてきました。多くの業者を目にし、その従業員とも現場を共にしていて良く思う事は、
【危機管理がなされていない!】
という事です。その大きな要因として、特殊清掃作業に従事する人間が、工法や、効能などを勉強しておらず、会社の決めた流れで作業をしている事が殆どであるからです。
筆者が実際に経験したお話で、危険と感じ、知っておいてもらいたいことを紹介します。
特殊清掃業を行う上で消臭作業は必須であります。
その消臭作業を塩素系の散布や塗布で行う業者が近年増加しています。
これは塩素による酸化分解を応用したものであり、消臭作業を行う事は可能であります。
しかし、どんな物でも適した値があります。
体液などの物体を分解するほど強力に作用させるには、非常高濃度での使用が必要になります。
このような症状はありませんか?
〇薬剤を散布している最中に苦しい
〇薬剤を散布している際に目が痛い
このような状態での作業を行っている作業者の方は、会社の社長などにリスクを訴え、酸素マスクや、様々な安全装置の導入若しくは安全性の高い作業方法に変更をお願いしましょう。
そのような行為を毎日続けていれば…
蓄積されれば呼吸器に健康被害が出る事は安易に想像が出来るはずです。
後では取り返しがつきません。
これも筆者が相談を受けた実例であります。東北地方で特殊清掃を始めた業者が、床を切断する際に、丸鋸などの電動工具で誤って指を切断してしまった。との事で正しい技術を学びたいとご連絡を頂きました。
その際、労災が認められず、医療費は元よりその後の賠償を給料に上乗せする形で支払っている。
との事でありました。
ではなぜ労災認定されなかったのか?そこには認識の甘さが原因としてあります。
特殊清掃=清掃業
特殊清掃業というと、その名前の通り清掃業を主体として清掃業の上位的なイメージを持たれます。
その為この業者は、清掃業としての労災にのみ加入をしていました。
しかし、特殊清掃業で行われるこのような作業はどうでしょうか?
〇丸鋸で床を切断する。
〇消臭作業の為クロスを剥がす。
特殊清掃業で日常的に行われるこのような作業は、【清掃の範疇】と言えるでしょうか?
どのように考えても、解体業や、内装仕上げなどの建設業であります。
建設業には、基本の労災にプラスして、建設業労災への加入が義務化されています。
特殊清掃の作業はどこまで行っても建設業の領域であります。
現在特殊清掃業を営んでいる方、特殊清掃会社に従事している方は一度きちんと確認をしておく必要があります。
万が一事故が発生した際に、自分が守られない!
では遅いです。
このように、特殊清掃業には人体や生命に関して重大なリスクがあります。
勉強不足では済まされません。
自分自身でもしっかり勉強や情報を取り入れる必要がある為、このような記事を作成した次第であります。
続いては知らないでは済まされない犯罪行為についてになります。
特殊清掃作業を行っていると自ずとお客様から様々な作業を依頼されます。
その作業は本当に無許可でやって良いのか?調べずに安易に行っているケースがあります。
そこで今回は筆者が長年特殊清掃業を行っていて許認可が必要なのに、知らずにやっているケースをご紹介いたします。
特殊清掃業を行う上で家財の撤去は必須と言えるでしょう。しかし、家財の分別などは行う事は可能ですが、処分を行うには一般廃棄物収集運搬の許可が必要です。
〇買取という名目で持ち帰る。
〇産業廃棄物として処分している。
といったケースで自社のトラックに積み込みを行い運搬していませんか?
処分を無許可がで行うと会社だけでなく、作業を行った特殊清掃作業員も罪に問われるケースもあります。
罰則は非常に厳しく5年に以下の懲役1000万円以下の罰金(法人は3億円以下)といったケースまで存在します。
詳しくはこちらの記事
会社に指示された作業を行っただけ!では通用しません。
筆者の所属する株式会社リスクベネフィット並びに運営する当サイト特掃隊では特殊清掃にまつわる特許を複数所有しています。では知的財産と言われる特許を侵害するとどのような事になるのか?
特許権、商標権等を侵害した者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処されまたは懲役刑と罰金刑とが併科されます。
とされています。非常に重たい罰則です。ですから知らないで作業をしていた!では済まされないのです。
更に
法人従業員等が特許権、商標権等の侵害行為を行った場合、法人にも3億円以下の罰金刑が科せられます。
とあります。知らずに作業を行っている特殊清掃員は元より、特殊清掃会社を運営している経営陣にはより
厳しい罰則が科せられるのです。
筆者が取得している特許はどのような物なのか?次の章で説明いたします。
特許権侵害となるのは、特許発明の「技術的範囲」にあるといえる方法を実施した場合です。
では、特許発明の「技術的範囲」はどのように特定するのでしょうか。
特許登録の申請をする際に、出願人は、特許庁に以下の5つの書面を提出しなければなりません。
この5つの書面のうち特許発明の技術的範囲を見極めるうえで最も大切な書面は「特許請求の範囲」という書面です。
それではリスクベネフィット社の【特開2020-96694】【故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法の特許請求範囲を見てみましょう!
【特許請求の範囲】
【請求項1】
故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法であって、
体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業と
汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、
を含むことを特徴とする、消臭方法。
【請求項2】
前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500g以上のオゾンを用いることを特徴とする、請求項1に記載の消臭方法。
【請求項3】
オゾン燻蒸作業後に、硬化剤を含む樹脂材料を、前記汚物の残存する内壁に塗布する塗布作業を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の消臭方法。
【請求項4】
オゾン燻蒸作業前に汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、
オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で解体した箇所を油性下地塗料で覆う被覆作業と、
を含むことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の消臭方法。
【請求項5】
弱アルカリ性液剤及び弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業を含むことを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の消臭方法。
【請求項6】
汚物清掃作業とオゾン燻蒸作業との間に、高圧水蒸気処理を行うことを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の消臭方法。
上記のような内容になっております。
具体例で言いますと
1汚染物除去作業後にオゾン燻蒸を行う。
2オゾン燻蒸作業後に特殊コーティングを油性で行う。
3体液清掃後に解体作業を行ってオゾン燻蒸を行う。
4オゾン燻蒸作業前に薬剤を散布する。
といった行為が特開2020-96694の特許になるという事です。
この方法は概ねの業者が消臭方法として使用しているのではないでしょうか?
特殊清掃人として作業をしているのは、遺品整理業者が多く、ハウスクリーニング業者やリフォーム業者も参入しています。
警察や葬儀社等からの依頼を個人で請け、特殊清掃だけを行っている人もいます。
年齢的には30代後半〜40代の方が多いです。男女比としては、男性8割、女性2割といった感じです。
20代は、社会経験が少ないため孤独死のような凄惨な現場の「重さ」を理解することが難しく、入社しても長続きしないです。
特殊清掃作業では、感染のリスクや作業効率を考慮して防護服を着用し、防毒マスクを着用して作業を行います。
近隣への臭いの事も考え、真夏であっても死臭が充満した部屋の臭いを外に出さないように窓は開けません。
エアコンも臭いが機械に付着してしまうので、基本的には動かしません。
防護服を着用しての真夏の作業は、サウナスーツを着用して作業しているのと同じなので、予想以上に過酷です。
それに耐えうる体力と、凄惨な状況に耐えられる精神面での強さが求められます。
未経験の人が特殊清掃人として働きたいと民間資格で基本を勉強することも良いかとは思いますが、それだけでは不十分です。
普段私たちが気を付けている事を4つ挙げてみました。
孤独死があった部屋に見積りや作業で入る時に、故人の死因までの情報を知る事はほとんどありません。
お亡くなりになった方が重篤な感染症を患っていた、という可能性も0ではないのです。
ですから消毒剤散布、防護服、防毒マスク等十分な対策を行ってから作業に移る必要があります。
亡くなられてから数時間で、腸内細菌が有機物の分解を始め腐敗ガスを発生させます。
死後3日も経てば蛆虫等の害虫が発生します。
ハエやゴキブリにより体液の汚染箇所は広がり、二次感染の危険性が高まります。
作業中特殊清掃の現場の窓を開けてしまうと近隣に死臭をまき散らしてしまう、ハエのような害虫が近隣を襲う等周囲に多大な被害を与えてしまいます。
心労が重なっているであろうお客様にさらなる負担を強いてしまう事は絶対にしてはなりませんので注意しなければいけないポイントです。
集合住宅の場合体液が階下の部屋まで染み込んでしまうということもあります。
技術の無い業者は、体液がある箇所の見た目だけしか清掃しません。
その後はオゾン脱臭機を長時間稼働させれば消臭ができると思ってます。
見た目が綺麗でも体液が染み込んでいる場合、臭いは滲み出てきてしまいます。
臭いの元が取り切れていなければ、オゾン脱臭をどんなに長時間行っても臭いは消えません。
未熟な業者はオゾン脱臭機を無意味に稼働させているので、価格が上がります。
適切な施工をしなければ作業時間が増え、無意味に価格が上がってしまう。
これでは特殊清掃人の価値が無いです。
特殊清掃人は確かな技術を提供し、お客様に寄り添う仕事でなければならないのです。
googleやyahooの検索ワードを分析すると「特殊清掃 求人」「特殊清掃 給料」のキーワードで調べている人がとても多いです。
それだけこの仕事に就きたい人が多い事だと思いますが、興味本位であったり高額な給与が貰えると思い調べている人が多いです。
雑誌で「高額収入仕事ランキング」や「転職するならこの仕事」のような記事で遺品整理や特殊清掃に関わる仕事が紹介されてます。
ですが、取り上げられている程の高額な給与ではありません。年相応かそれより多少多い程度です。
興味本位であったり、間違った給与額の情報だけでこの仕事を希望する人は長続きしません。
何よりも大事なのは「想い」です。
「特殊清掃人として故人やご遺族に何ができるのか?」
ご依頼者に満足の頂けるサービス提供を考えている人は努力を惜しみません。
除菌、消臭の技術について日々研究をし、孤独死やペットの糞尿臭、火災現場での焦げ臭などに効率よく対応できるよう努力をしています。
この仕事に新規参入を考えている業者や個人から「現場の経験をさせてほしい」と問い合わせを多く受けますが、基本的にはお断りをしています。
それは何故かと言うと、その会社、その人の「想い」が見えてこないからです。
口では立派な事を言ってきますが、それはノウハウを教えてもらうための綺麗事でしかなく、ちょっと見聞き、何回か現場作業に入っただけで「特殊清掃人」になったつもりでいるのです。
そういう業者(人)がトラブルを起こしているのです。
安い見積を出して契約しても、技術力は無いので完全消臭が出来ずクレームになります。
極端な話、安さをウリにしている業者より、見積額が高くても内容をきちんと説明してくれる業者の方が信用できます。
特殊清掃に用いる薬剤や機材は決して安いものでは有りません。
特殊清掃作業には危険が伴います。
それらを加味すればそれなりの費用も掛かります。
それを高額だとかぼったくりと言われるのは、見積額の根拠が無いので依頼者に納得して頂ける説明が出来ないからです。
以上のことを踏まえて、本物の特殊清掃人とは以下のポイントを押さえている人なのではないでしょうか。
この気持ちをもって働くことができる人であれば本物の特殊清掃人と呼べるのでしょう。
これらの気持ちを持って特殊清掃の仕事に打ち込むことが出来る!
という方であれば特掃隊は喜んでその方を迎えいれることでしょう。
貴方と肩を並べてお仕事ができる日が来ることを願っています。