孤独死した親族の引き取りを拒否するかどうか迷っている人がいるなんて、
本当でしょうか?
親族の引き取りを拒否してはいけない、という法律はないので関係が良好ではなかった
ため、引き取りをされない方がいらっしゃるのも事実です。
そうなんですか!?なんだかやり切れないですね。
ただし、引き取り拒否をすればすべて終わりというわけではありません。
今回は、手続きや気を付けるべきことをみていきましょう。
もくじ
親族が孤独死したとき、ご遺体の引き取り拒否はできるのでしょうか。結論をお伝えすると「引き取り拒否をしてはならない」という法律上の決まりはありません。
孤独死された方の親族が引き取りを拒否すると「行旅死亡人(こうりょしぼうにん※)」として自治体で直葬(火葬)し、無縁仏として合祀墓に納め、供養されます。
※行旅死亡人:本人の本籍地や住所がわからない、かつ引き取り手がいない故人のこと。
しかし、一般的に考えると配偶者、直系血族(親や 子など)、および兄弟姉妹が引き取るのが道義的といえます。
ただし、この点は感情面の問題です。生前の故人との関係によっては引き取りたくないと感じる方もおられるでしょう。ご自身の気持ちと向き合って、どうするのか判断するとよいでしょう。
親族が孤独死した場合には、優先的に「相続手続き」をおこないましょう。
故人が親族との関係が希薄である、もしくは縁を切っていたとしても、相続はおこなわれます。引き取り拒否と遺産相続は別の話であり、引き取り拒否をしても「戸籍上つながりがある場合には相続の手続きが必要になる」と、法律上の決まりがあるのです。
そこで、相続人が取るべき行動をみていきましょう。
まずは被相続人(亡くなった方)の財産情報を調査します。
孤独死の場合、被相続人の情報がほとんど無いことが多いので、まずは被相続人の情報を得ることが重要です。
その結果、相続をするのか、相続放棄をするのかを判断できるようになります。
具体的には以下のような調査をおこないましょう。
相続手続きでは、相続対象となる遺産があるのかどうか、どんなものがあるのか調査する。
その対象は、被相続人のプラス財産とマイナス財産を含める、すべての財産。
たとえば、土地、預貯金、家財道具などのプラス財産、住宅ローン、借金などのマイナス財産など。
相続放棄をしない限り、マイナス財産もプラス財産も含めて、すべてを相続することになる。
マイナス財産があるかどうかの調査は優先的におこなうべき。
残った財産の価値を知るためにも、相続財産を適正に評価・査定してもらうことが重要。
たとえば不動産であれば、実際の取引相場価格を調べたり、不動産鑑定士に鑑定を依頼したりする。また家財道具を鑑定士に査定してもらうなど。
相続をするのかどうかの判断材料にするとよい。
実際にこれらの財産情報調査をおこなうためには、時間も手間もかかるため、弁護士に依頼をすると良い。
相続財産調査だけでなく遺産分割でもめそうな場合や、すでにトラブルとなっている場合にも対応してもらえ、安心して依頼できる。
ただし、財産の有無に関わらず相続放棄をしたい場合は、財産情報を調査せずおこなうことも可能です。
法律上、人が亡くなると相続が開始されますが、相続人は相続をするのか、相続放棄をするのか判断しなければいけないと決まっています。
とくに相続放棄を選択する場合には、家庭裁判所にその旨を相続開始から3ヶ月以内に申し立てしなければならないため、早めに行動する必要があります。
財産調査でわかった情報をもとに、以下を参考にしながら相続をするのか相続放棄をするのかを判断しましょう。
メリット | 遺産がプラスになる場合は、自分の資産にできる |
デメリット | 被相続人が負債を抱えている場合には、返済の義務が生じる 遺産分割協議をする過程でトラブルになる可能性がある |
メリット | 被相続人がクレジットカードや住宅ローンなどで借金をしていた場合でも、支払の義務が生じない 相続人同士で集まって遺産分割をする過程でトラブルになるケースも多いが、そうしたトラブルに関わらなくて良くなる 相続放棄をすることで、自身が相続する分がほかの相続人に配分されるため、ほかの相続人の遺産取得分を増やせる |
デメリット | 不動産や高額な預貯金等のプラスの資産があったとしても、相続できなくなる |
相続するのか、相続放棄をするのかを判断したら、実際に手続きをおこないます。
相続税の申告 | 被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内に相続税の申告をする必要がある。 |
遺産分割協議書の作成 | 相続人が複数人いる場合には、遺産分割協議で話し合いをおこない、その内容を「遺産分割協議書」にまとめておく。 |
相続登記 | 被相続人から相続した不動産に関して、相続によって所有権移転登記をすることをいう。 期限は特にないが、登記をしないまま長年放置すると権利関係が不明瞭になって処理が複雑になってしまう。できる限り、権利関係が確定した時点で相続登記を速やかにおこなっておくべき。 |
相続放棄をする場合は3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申し立てする必要があります。
以下の書類を用意して家庭裁判所への郵送が必要です。
この4つの書類以外に必要な書類は、被相続人との続柄によって異なります。
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
被代襲者(配偶者または子)の死亡記載のある戸籍謄本
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
もし、被相続人の兄弟姉妹も死亡している場合には、
兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本
親族が孤独死した場合、相続手続きを優先しておこなうべきであるとお伝えしましたが、実は相続手続きをおこなう前に気をつけるべきことがあります。というのも、相続するのか、相続放棄をするのかを判断する前に、「遺品整理」をすると相続を承認したとみなされてしまう可能性があるのです。
以下で詳しく解説していきます。
法律上「相続人が相続財産の全部、または一部を処分したとき、単純承認をしたものとみなす」と決まっているため、相続手続きをおこなう前に遺品整理をおこない、財産の処分をしてしまうと、もし相続放棄をしたくてもできなくなってしまいます。このときの「処分」とは、以下のような内容です。
一方、これまでの裁判の判例で、処分に該当しないのは以下のような内容であるとわかっています。
基本的には相続前に遺品整理をすれば「相続を承認した」とみなされますが、場合によっては相続前の遺品整理や特殊清掃をしても、例外とみなされるケースがあります。
それは孤独死によって、遺体が腐敗してしまったことによる臭いや汚れによって、近隣住民や他人に迷惑や危害が加わるような場合です。このような場合は、相続前に遺品整理や特殊清掃をしても問題ないとするのが一般的です。
ただし、先にお伝えしたとおり、やはり財産にかかわるものを処分してしまうと「相続を承認した」とみなされてしまう可能性が高いので、孤独死による相続前の遺品整理や特殊清掃をおこなうときは注意が必要です。弁護士に依頼して、遺品ごとにどのように扱えばいいか相談すると、スムーズに遺品整理や特殊清掃を進められます。
したがって、遺体の腐敗がなく急いで特殊清掃や遺品整理をおこなう必要がない状況で、相続放棄する可能性がある場合には、遺品整理は相続後におこないましょう。
今回は孤独死した親族の遺体の引き取りと、相続についてみてきました。
一般的には遺体は配偶者、直系血族(親や子など)、および兄弟姉妹が引き取るのが道義的といえますが、生前の故人との関係で引き取りたくない場合は拒否をすることができます。
一方、遺体の引き取りとは関係なく、戸籍上つながりがある相続人が相続手続きをおこなうことは法律で定められています。相続人が被相続人に関する情報を知らないときは、弁護士に相続財産調査を依頼しましょう。
その結果、相続するか相続放棄するかの判断をし、手続きをおこないます。
また、相続手続きをおこなう前に遺品整理をしてしまうと、相続を承認したとみなされるので、遺体が腐敗して臭いや汚れによって、近隣住民や他人に迷惑がかかるようなケース以外は、相続手続き後に遺品整理をおこなうようにしましょう。