汚泥はどのような方法で処理をしたらいいのですか?
勝手に捨てたらだめなのでしょうか?
汚泥は産業廃棄物ですから「産業廃棄物処理法」に従って適切な処理を
しなければなりません。
もくじ
汚泥とは、事業活動をするうえで発生する泥状の物質の総称です。
法令で定められた産業廃棄物に分類されるので、勝手に処分することはできません。
汚泥には、無機性汚泥と有機性汚泥の2種類があります。
無機性汚泥とは、金属や石灰、石膏などの無機質によって汚染された排水から排出される汚泥です。
特殊な加工をする工場や工事現場などで排出されます。
一方、有機性汚泥とは有機質で汚染された排水から出る汚泥で、下水や食品排水など主に生活を
するうえで発生する汚泥を指します。
特徴 | 主な種類 | |
無機性汚泥 | 無機質で汚染された排水から出る汚泥 | ・石灰 ・酸化金属粉末 ・圧延油や潤滑油などの油を含む排水 など |
有機性汚泥 | 有機質で汚染された排水から出る汚泥 | ・下水 ・食品排水など |
産業廃棄物には法令定められた20種類が該当しますが、その中で最も排出量が多いのが汚泥です。
環境省の「産業廃棄物の排出及び処理状況」によると汚泥の排出量は、産業廃棄物全体の44%を
占めています。
参考:環境省「令和2年度事業産業廃棄物排出・処理状況調査報告書」
汚泥は脱水などの中間処理をした後に、主に次のような6通りの方法で処理されます。
では、ひとつずつみていきましょう。
対象汚泥 | 有機性・無機性 |
---|---|
二次廃棄物 | ・燃え殻(ただし、溶融処理・セメント原料化などで活用できる) ・塵 |
特徴 | ・大量な汚泥の容積を減らし処分しやすくする ・短期間で処理できる |
焼却とは、脱水し乾燥させた汚泥を焼却炉で燃やす方法です。
焼却することで無機物となり、悪臭や害虫が発生しない状態で処分ができます。
使用している焼却装置は業者によって異なりますが短時間で高温焼却するため、大量の汚泥を短時間で
処理できるところが特徴です。
脱水した汚泥を100トン焼却することで、およそ2トンの灰が排出されます。
排出された灰は主に
という3つの方法で最終的に処理されます。
四塩化炭素や水銀など廃棄物処理法で定められている有害物質を含まない灰は、都道府県の認可を
受けている埋め立て施設に埋めることができます。
しかし、近年は埋め立て場所の残余年数が減少しており、処分価格の値上げや処分ができないと
断られるケースもあります。
参考:群馬県産業廃棄物情報「燃え殻、ばいじん、汚泥等の埋立処分方法」
東京都環境局「どういう方法でごみを埋め立てていますか。」
溶融処理とは、汚泥の焼却により発生した灰を1,200℃以上でもう一度焼却して溶かし砂のような
スラグ状にすることです。
灰を高温で焼却することで灰に含まれるダイオキシンが分解され、環境に配慮した素材に生まれ
変わります。
スラグ状になると容積が二分の一となるため、埋め立てを選択する場合は場所を取らないところも
特徴です。
また、汚泥から作られるスラグは砂に似た性質があるので、アスファルト合材の細骨材やタイル、
道路舗装用のブロックなどに再利用されています。
兵庫県では溶融処理で作られたスラグを再生資源の「エコ砂」として販売し、積極的に
活用しています。
参考:兵庫県「下水汚泥溶融スラグ「エコ砂」
汚泥の焼却により発生した灰は、セメントやコンクリートの原料となる粘土成分と同じ成分が
含まれています。
そのため、セメントやコンクリートの原料として活用できます。
セメント製造過程において灰を直接投入するだけなので、再利用しやすいところが特徴です。
処理方法によっては、焼却をしないで汚泥をそのまま使用する場合もあります。
参考:北海道「下水汚泥のセメント原料化」
対象汚泥 | 無機性 |
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二次廃棄物 | なし |
特徴 | ・焼却処理をしていない分容積が大きく、費用がかさむ ・処分場の残余量がなければ処分できない |
産業廃棄物埋立処分基準で汚泥を埋め立て処理するときは含水率85%以下にすると定められているため、
焼却処理をしなくてもこれをクリアできれば埋め立て処理ができます。
ただし、容積が大きく処分費がかさむ可能性があります。
自治体によっては設備基準が厳しく設けられる場合があり、利用できる施設が限られているのが現状です。
対象汚泥 | 有機性 |
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二次廃棄物 | なし |
特徴 | ・環境に配慮して汚泥の処分ができる ・汚泥を発酵させなければならないため処分に時間がかかる |
堆肥化とは、脱水処理した有機汚泥を人為的に発酵させて肥料にする方法です。
脱水処理した有機汚泥に微生物と適量の水を加えて、微生物が活性化しやすい温度で一定時間保管すると、
栄養価があり扱いやすい肥料が完成します。
肥料は植物や野菜の栽培に活用でき、汚泥を土に戻すことが可能です。
環境負荷が少ない一方で、処理に時間がかかる、一定時間汚泥を貯めておける設備が必要などの
デメリットがあります。
対象汚泥 | 有機性 |
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二次廃棄物 | 液肥など |
特徴 | ・環境に配慮して汚泥の処分ができる ・微生物を活発化させてメタンガスを発生させなければ ならないため、時間がかかる |
メタン発酵とは、有機物汚泥を微生物に分解させてメタンガスを発生させる方法です。
無酸素状態で微生物が活動しやすい温度を保ち一定期間管理することで、メタンガスが発生します。
発生したメタンガスは、ボイラーやガス発電機の燃料として利用することが可能です。
また、有機物を分解する段階で発生する液肥は、肥料としても活用できます。
この方法も環境に配慮して汚泥を処理でき、主に下水処理施設で導入されています。
参考:再生可能エネルギー推進協会「メタン発酵の基礎知識」
産業廃棄物である汚泥は、排出した企業が最後まで責任を持ち処理をしなければなりません。
この考え方を排出業者責任と言います。
排出した企業が汚泥の最終処理方法まで確認できていないと産業廃棄物処理法に反していることになり、
措置命令などを受ける可能性があります。
汚泥の処理方法としては自己処理と委託処理の2種類がありますが、自社で適切な汚泥処理ができる
施設を設けていない限りは委託処理となります。
自己処理 | 事業者が自ら適切な汚泥処理をする方法 |
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委託処理 | 産業廃棄物処理業者に汚泥の処理を依頼する方法 |
委託処理をするときに重要なのは、都道府県に産業廃棄物処理業・産業廃棄物収集運搬業の届出を
提出しており都道府県知事の許可を得ている業者であることです。
許可を得ている業者は汚泥処理ができる施設を有している、国家資格である廃棄物処理施設技術管理者が
在籍しているなど一定の水準をクリアしているので安心して委託できます。
無許可の業者に依頼し不法投棄などをされると、業者とともに排出企業も罰則を受けることになります。
汚泥を排出する事業者には適切な処理が求められています。
参考:熊本県環境生活部廃棄物対策課「産業廃棄物の処理と方法」
今回は汚泥の処理についてみてきました。
汚泥とは、事業活動をするうえで発生する泥状の物質の総称で、大きく分けると無機性汚泥と
有機性汚泥の2種類があります。
汚泥は産業廃棄物なので産業廃棄物処理法に則って処理しなければなりません。処理方法は
次の6つがあります。
焼却 | 脱水し乾燥させた汚泥を焼却炉で燃やす方法 | ||
1 | 焼却後 | 埋め立て | 都道府県の認可を受けている埋立施設に埋める |
2 | 溶融処理 | 汚泥の焼却により発生した灰を1,200℃以上でもう一度焼却して 溶かし砂のようなスラグ状にする | |
3 | セメント原料化 | セメントやコンクリートの原料となる粘土成分が含まれているため、 セメント、コンクリート原料として活用する | |
4 | 埋め立て | 脱水、乾燥が完了している無機性汚泥ならば埋め立てをすることが可能 | |
5 | 堆肥化 | 脱水処理した有機汚泥を人為的に発酵させて肥料にする | |
6 | メタン発酵 | 有機物汚泥を微生物に分解させてメタンガスを発生させる |
これらの方法は、排出される汚泥の種類や汚泥の量などを把握して比較検討する必要があります。
産業廃棄物である汚泥は排出した企業が最後まで責任を持って処理をしなければなりません。
企業で適切な汚泥処理の施設を設けていなければ処理を業者に委託します。
委託するときには、都道府県に産業廃棄物処理業・産業廃棄物収集運搬業の届出を提出して
都道府県知事の許可を得ている業者を選びましょう。